ステージ!/踊るなら、きみとワルツを

鐘屋横丁

     

「……」
「わたしも、早く会いたかったよ」
「そうか」
 女は、真っ直ぐな目をこちらに向ける。その輝いた目が、いつもながら愛おしい。
「今夜は、空いてるか」
「うん。大丈夫です」
「共に、過ごそう。今日はずっと、キミの事を考えていた。まるで、そういう病のようだ」
「なんだか、嬉しいな。わたしも、そういう時はあります」
 女は少し照れた様子を見せる。病は、まだ治まりそうにない。

 外に出た。風がほどよく吹いていて、心地良い気候だ。外は暗くなりかけていた。適当に食事を済ませて、いつものホテルへ向かった。
 ……こういう姿も、見られているのかもしれない。だが、いちいち気にしていてはキリがない。勝手にしろ、という投げやりな気分になる。

「さて、次はいよいよサカキさんの手持ちポケモンの紹介です! どうぞ!」
 チカゲが拍手をする。ボールを放る。サイホーン。ダグトリオ。ニドクイン。ニドキング。サイドン。控えも何体かいるが、打ち合わせでこの面子にする事が決まった。見栄えの問題だろう。
「ヒュー! どのポケモン達も凄く鍛えられてるのが分かります」
「図体のでかいのが多くて、すみませんね」
「いえいえ! カメラさん、こっちこっち。このサイドン君のツノといったら! 傷があるのがまた、カッコいいですね〜。歴戦の重みを感じます」
 チカゲは興奮した様子でサイドンを撫でる。サイドンは少し緊張しているが、褒められて満更ではなさそうだ。
「そいつは、一番レベルが高いですね。いつも、殿を守ってくれます」
「このニドクインちゃんと、ニドキング君はつがいですか?」
「いえ。2匹ともあまりその気が無いみたいで……同僚同士、という感じですね」
「クールですねぇ! ダグトリオ君とサイホーン君も落ち着いてますね。
 結構、光とかセットに興奮して暴れちゃう子も居るんですけど、みんな大人しくて賢いですね〜! えらいぞ〜」
 チカゲはカメラを誘導しながら、次々と手持ち達を映していく。撮影中は落ち着いているように、あらかじめ話しているが、よく守られている。我ながら、優れたポケモン達だ。少し、誇らしかった。


~ 10/17 ~