「ノー! バッジはビクトリーしたチャレンジャーじゃないとダメね。それがルール!」
「拙者も反対だな。勝者のみが得られるものであるべきだ。サカキ殿に実力があるのは当然であり、挑戦者はそれを超えるよう励むべきだ」
「あたしは、頑張ってる子にはあげちゃうかな……見てるとつい……」
「その時の状況によると思いますわ。僅差の勝負であったり、工夫された戦いであれば認めてもよろしいかと」
マチスとキョウが反対意見を述べる。カスミとエリカがさらに反対意見を続ける。何だか、ややこしくなってきたな。
「私は、反対です。皆さん、結構柔軟に対応なさってるのですね。意外でした」
ナツメが口を開く。タケシは何も言わず悩んでいるようだが、あの性格では容認派だろう。4対4。先程まで中身のなかった会議に、緊張が走る。
「……最強のジムリーダーなんて、名前だけです。心配しなくても、強い挑戦者が来れば、私もいつかまた負けますよ。テレビを見て、挑戦者も増えるでしょうし」
「しかしだな、サカキ君」
「カツラ殿。私は考えを変えるつもりはありません。私に勝てないような挑戦者は、どのみち四天王に負けるでしょう」
「むう……」
「皆さん、お堅い話はこの辺に致しましょう。今日は、サカキさんにもうひとつお話があるんですよ」
エリカが、ニコニコと笑う。何の話だ。この女が言うと、嫌な予感しかしない。
「何ですかな」
「うふふ。サカキさん、随分と可愛らしい方がいらっしゃるんですね」
「……何ですかな?」
嫌な予感は的中した。
「タマムシで、一緒に歩いているのをお見かけしたんです。随分とお若い……」
「確かに、用向きがあってタマムシに居ることはあります。ジムの門下生でしょう」
「まあ。門下生の方と、ホワイトデーに一緒にディナーを召し上がるんですか?」
「……」
全員の視線がこちらへ集中する。苦笑いを返す事しか出来なかった。一体何処まで知っているんだ。実に、恐ろしい女だ。
「正解のようですね」
ナツメがふっと笑う。こいつは、エスパータイプの使い手だが、自身にもエスパー能力があるらしい。読心くらいはお手の物だろう。エリカの情報網に、ナツメの読心。合わせて使えば、無敵ではないのか。
「やれやれ、女性陣には敵いませんな。プライベートの事は、止して下さい。私にも、恥ずかしさはある」
「そうですね、興味はありますが。では、私からひとつお話が」
ナツメがコホンと咳払いをした。
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