「……流石、情報が早いですな。収録を昨日済ませて来たところです」
「えーっ! すごーい!」
カスミが目を輝かせてこちらを見てくる。やはり、それなりに人気のある番組なのだろう。
「生花教室の生徒さんにテレビのお仕事をなさってる方がいらして、それで。最強のジムリーダーとしてお出になると伺いましたわ。素晴らしいことです」
エリカが、口元を隠して笑う。情報網の広そうな女だ。今後もタマムシを拠点とするならば、警戒せねばならない。
「トキワは、田舎ですからな。わざわざ挑戦に来るようなトレーナーも少ないんでしょう。最強なんて、とんでもない話で。私も、まだまだです」
「いいや! 謙遜は良くないですよ! これまで、1人にしか負けてないらしいじゃないですか」
タケシが、目を輝かせてこちらを見てくる。タケシの目には、尊敬の色が見えた。ジムトレーナーや団員たちと同じ目だ。岩タイプ使いの男だ。岩タイプと地面タイプを合わせ持つポケモンは多い。こちらとしても、何か近いものを感じないわけではない。
「タケシ君。よく、知っているな。噂にでもなっているのかな」
「では、現状ジムバッジはそのトレーナーにのみ渡しているのですな?」
カツラが、サングラスの位置を直しながらこちらを向く。
「ええ。そういう事になりますね」
「ふむ。少し、厳しすぎやしないですか? サカキ君が就任してから挑戦者に手渡されたジムバッジがたった1個では、セキエイ高原に挑戦できるトレーナーもまたその1人のみという事になる」
「……」
返す言葉がなかった。そのジムバッジを持った女が、他のジムバッジを集め、セキエイ高原になど行く気がない事を知っているからだ。
「もっとこう、たとえ負かした相手でも、光るものがあれば渡しても良いのではないかね」
「それは……」
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