「夜のトーク番組というと……。まあ、ひょっとしてポッポチャンネルのチカゲ・ルームですか?」
「ああ。そんな名前だったな。知っているのか」
「あら、ご存知なかったですか? 正統派のトーク番組ですが、司会のチカゲ様人気もあって、視聴率も悪くないと思いますよ」
マイムが笑顔で解説をする。こういう事には詳しそうだ。
「そうなのか。普段は、ニュースしか見ないからな」
「ボスらしいなあ……。ああ、チカゲ様の隣に座れたの、羨ましいなあ……」
女はたまらないと言った表情だ。サインの1つでも、貰って来てやれば良かったかもしれない。
「さて、サカキ様。そろそろお出になった方が宜しいかと」
マイムが手帳を開き、部屋の時計を見る。
「ああ。今日は……またジム絡みか。うんざりして来たな」
「カントージムリーダー会議ですね。その後は、一度ジムに戻られた方がよろしいでしょう」
「そうだな。
ジムに顔を出すとして、すぐには帰れないだろうから、そのうち夕方になるな。今日は、何も出来なくてすまない」
「いえいえ、私にお任せ下さい。細かい仕事は片付けておきます」
「よろしく頼む」
「はい。いってらっしゃいませ」
部屋を出た。これから先に待ち受けているのは、間違いなく嫌な部類の仕事だ。ため息が出る。
……会議は踊る。されど進まず。そんな言葉を残したのは誰だったか。不定期に行われるカントージムリーダー会議。特に内容がない事が殆どで、たまの顔合わせのようなものだった。
カスミ、エリカ、ナツメ。女性陣は、とにかくよく喋る。男性陣では、マチスとカツラが多弁な方だ。自分は適当に相槌を打っている。早く、煙草が吸いたい。
「ところで」
エリカが、こちらを向いて微笑む。どこか、捉えどころがなくて、読めない女だ。
「サカキさん、今度チカゲ・ルームにお出になるというのは本当ですか?」
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