そこまで嫌な仕事ではないが、決して好きな仕事ではなかった。それは間違いない。正直なところ、かなり疲れた。恐らく、うんざりとした顔で喋っているだろう。だが、目の前の2人は、上機嫌に笑っていた。
「サカキ様が! テレビに!」
「すごい! ボスがテレビに!」
2人とも、目を輝かせている。
「それで、収録はいつなんです」
「ああ、昨日行ってきた」
「もう終わったんですか!? 確かに昨日は野暮用があるとか仰ってましたが、まさかテレビの収録とは」
「言ったら、ついて来たがるだろう。お前は。さっさと終わらせたかったんだ」
「うう……確かについて行きたかったです……敏腕マネージャーとして……」
マイムが、しょぼくれる。
どうしても、断れない仕事だった。ジムリーダーとしての仕事だ。
トキワは、大した名産品も無ければ、観光資源にも乏しい小さな町だ。簡単な話、ジムへの挑戦者を増やせば、宿屋や飲食店にそれだけ金が落ちる。町おこし、とまではいかないが、「最強のジムリーダー」を客寄せに使うつもりらしい。増えた挑戦者を相手にするのも自分だと言うのに、なかなか酷使されるものだ。
「これは是非とも録画しなければ……宣伝のために熱湯のお風呂に耐えるお姿を……くうぅ……」
「ボスならきっと、地球押し出来ますよね!」
「一体何に出ると思ってるんだ、お前たち……。
夜のトーク番組に出るだけだ。喋る内容も作家の台本通り。大して面白い事にはならないぞ」
最初に、トキワシティの映像と紹介。手持ちポケモンの紹介。後は、ポケモンを育てるコツは、愛だの信頼だのを散々言わされた。実にくだらない。ジムリーダーとしての仕事は、こういう余計な事も多い。
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