「失礼します、マチスさん」
警官だった。何か紙を持っている。
「オー。ゴクロウサマデース」
「ジムの入り口に貼ってある手配書を、増やしてもいいですか? 新しいものが出来たので」
「いいですヨー。悪い奴、早く捕まるといいネ」
「ちなみに、新しいのはこれです。解散したロケット団の首領と見られていて、名前は——」
「……サカキ」
手配書をみたマチスの、顔色が変わった。驚いているようで、どこか悲しそうな顔だ。
「おや。知ってるんですか?」
警官が尋ねる。
「……トキワジムの、リーダー。じめんタイプを使う、それは強い男だったと聞いてるネ」
「へえ。悪いリーダーも居たもんだね」
そう言いながら、マチスの持つ手配書を覗き込んだ。……この顔。じめんタイプを使う。強い、男。心当たりがあった。胸がどきりと音を立てる。間違いない。クレイだ。ロケット団の、首領だって……!? 何かの間違いじゃないのか。事態が飲み込めない。
「どうしました? 顔色が悪いようですが」
警官が、こちらにも尋ねてくる。
「……知り合いに、少し似ていてね。でも、全然バトルは弱っちいやつさ。他人の空似だね、アッハッハ」
「そうでしたか」
笑いながら、頭の中は混乱が続いていた。どういう事なのだろう。本人に直接聞くべきか。聞いていい過去なのだろうか。2人で旅をしたのは、逃走のカムフラージュだったのだろうか。イワヤマトンネルを通ったのも、人目につかないためだったのだろうか。まず、追われている事の心配をすべきだろうか。すぐそこまで、警官が来ているのだ。
ぐるぐると色んなことが頭を回り続けるまま、クチバジムを後にした。
~ 7/10 ~