君との旅路

鐘屋横丁

     

 ……そうして、夜を迎える。
 アタシ達は、決して男女の関係ではなかった。お互いを好きだと言ったり、そういったやり取りは一切しなかった。奴に、昼間のうちにそんな様子は全く見られなかったし、アタシもそんな事は考えて居なかった。でも、どちらからともなく——抱き合った。最初に夜を共にした時に、呆気なく一線は越えてしまった。
 ……奴と過ごす夜は、情緒もへったくれもないものだった。ただの求め合いだ。言葉も少なく、獣のように互いを欲して交わっていた。時にはシャワーも浴びずに始まる時もあった。終われば、いつものような会話を交わす。何事もなかったかのように。それが、心地良かった。面倒な事もなく、さっぱりとしていて良い。回数も、前戯の長さも、絶頂までの時間も、何もかもがちょうど良かった。身体の相性が良いのかもしれない。 
 終われば奴は、煙草を吸った。安っぽい銘柄の匂い。嫌いじゃなかった。それに包まれながら眠りに落ちる。それがいつもの夜の終わり方だった。

 ……クレイは言った。
「キミのサンドパンは、じめんの技を覚えるのが少し遅い。わざマシンで補強してやるのがいいだろう」
「確かに、電気ポケモンの弱点をじめんの技で突いてやりたいからね。どんなものがいいかね」
「俺のものを、ひとつやろう。大技だ。使いこなせるようになるには、少し時間がかかるかもしれない」
「いいのかい? サンドパン、今日から特訓だね!」
 サンドパンは背中の針を逆立てて、フーッと息を吐いた。やる気に満ちている証拠だ。
「これだ。中には、じしんが入っている」
 差し出されたわざマシンを受け取った。その日から、使いこなすための特訓が始まったのだった。

 ……今日のこの瞬間のために、練習を重ねた。サンドパンの身体に、少し負荷のかかる技だ。隙も大きい。ここぞ、という時に使う大技だ。
 バッチリ、決まった! ライチュウは大きく動揺し、正面から技を食らい、相性不利のこの一撃にダウンした。
「ライチュウ! オーマイガー!」
 マチスが、ライチュウをボールに戻す。
 勝った。サンドパンは、まだまだ元気だ。ほぼ完勝と言っていいのではないだろうか。
「やられたネー。あんな大技まで持ってるなんて、グレートなサンドパン!」
「ありがとうよ。アタシの自慢の相棒さ」
「グレートなユーとサンドパンに、オレンジバッジ、プレゼントするネ!」
「やった!」
 これで、3つめのバッジだ。嬉しい! サンドパンも、マンキーも、よく頑張ってくれた。クレイに、早く勝利を報告したい。
 ……その時。扉をノックする音が聞こえた。


~ 6/10 ~