……そうして、夜を迎える。
アタシ達は、決して男女の関係ではなかった。お互いを好きだと言ったり、そういったやり取りは一切しなかった。奴に、昼間のうちにそんな様子は全く見られなかったし、アタシもそんな事は考えて居なかった。でも、どちらからともなく——抱き合った。最初に夜を共にした時に、呆気なく一線は越えてしまった。
……奴と過ごす夜は、情緒もへったくれもないものだった。ただの求め合いだ。言葉も少なく、獣のように互いを欲して交わっていた。時にはシャワーも浴びずに始まる時もあった。終われば、いつものような会話を交わす。何事もなかったかのように。それが、心地良かった。面倒な事もなく、さっぱりとしていて良い。回数も、前戯の長さも、絶頂までの時間も、何もかもがちょうど良かった。身体の相性が良いのかもしれない。
終われば奴は、煙草を吸った。安っぽい銘柄の匂い。嫌いじゃなかった。それに包まれながら眠りに落ちる。それがいつもの夜の終わり方だった。
次の日。やっぱり何事もなかったかのように、1日は始まる。昨日も、激しい夜だった。何度も突かれた下腹部が、少し鈍く痛む。
ホテルで軽い朝食を取って、外に出た。
「じゃあ、この噴水の前で。行ってくるよ」
「ああ。頑張ってこい、ジータ」
「ありがとよ、クレイ」
クレイと別れる。にかっと笑い、ジムへと向かった。
……ジムに挑戦するのは3度目だ。作法にも、慣れて来た。まずは、ジムトレーナー達とバトル。それから、リーダーに挑戦だ。連戦になるから、切り札は最後まで、出来るだけ出さないでおく。
「行け! ビリリダマ!」
「そらっ、マンキー!」
「ソニックブーム!」
最初に仕掛けてきたのは、ジムトレーナーだ。電気タイプは、素早い連中が多い。
「怯むんじゃないよ! みだれひっかき!」
ソニックブームのダメージは小さい。マンキーは、まだまだやれるという表情だ。素早さ勝負なら、マンキーだって負けてない。距離を一気に詰めて、得意技をお見舞いだ。
「今だよ! からてチョップ!」
技から技に、繋げる。マンキーの一撃で、ビリリダマは動かなくなった。
「くっ……ビリリダマ……」
ジムトレーナーが、ビリリダマをボールに戻す。
「アンタで、最後のジムトレーナーだね」
「ああ。リーダーは奥の部屋にいる」
「通らせてもらうよ」
奥の部屋のドアを開ける。大きなバトル場があり、1人の人物が待ち構えていた。
クチバジムリーダー、マチス。迷彩柄の服を着た、大柄な男だ。
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