君との旅路

鐘屋横丁

     

 
 
 
 着いた町の名前は、クチバシティ。ハナダからイワヤマトンネルを抜けて、シオン、ヤマブキと通り抜けてきた。ヤマブキにはジムがあったが、後回し。この辺じゃめっぽう強いらしくて、それよりは難度が低そうなクチバのジムに先に挑戦する事になった。
 クチバは港町だ。すぐそこに、海が見える。大きな船がいくつも泊まっていた。日が、沈みかけていた。夕日を浴びて、水面がキラキラとオレンジ色に光る。
 宿を探すことにした。……自分1人だったら、ポケモンセンターの簡易宿舎へと行くところだった。だが、クレイはいつもそこそこのグレードのホテルを選ぶ。最初に、あまり持ち合わせがない事を打ち明けると、気にするなと言ってアタシの分も払ってくれた。太っ腹だ! それからは、ずっと好意に甘えている。
 夕食のステーキを食らいながら、明日の予定を話した。
「ジムに挑戦するのは明日だな。クチバジムは電気タイプだ。お前の手持ちと、相性はかなり良い」
「ああ。きっと、勝ってみせるさ」
 カットした肉を頬張る。勝算は十分にある相手だ。負ける気は、していない。
「イワヤマトンネルを越えるルートを取ったことで、サンドパンもだいぶ鍛えられただろう。警戒はすべき相手だが、楽に勝てるレベルに達していると俺は思う」
 クチバまでヤマブキを真っ直ぐ通らず、わざわざ険しいイワヤマトンネルを越えてきた。クレイの提案だった。レベルアップには、丁度良いと。
「うん! アンタにそう言って貰えると、嬉しいね」
「俺はジムには行けないが、期待しているぞ」
「なんだい、来ないのかい。かっこいい所見せようと思ったのに」
 本心だった。成長した自分を、見て欲しかったのだ。
「すまないな。ジムにはあまりいい思い出が無くて。行きたくないんだ」
「ふーん。何があったか知らないけど、難儀だね、アンタも」
 余計な詮索はしない事にした。すれば、こいつは居なくなってしまうだろう。そんな気がした。ただの勘、だけれど。
 一緒にいて、少し時間が経った。居心地が、悪くないのだ。まだ、共に旅がしたいと思っていた。


~ 3/10 ~