サンドパンは、アタシの相棒だ。褒められて、悪い気はしない。バトルの最中は冷静な男だと思ったが、口元に笑みを浮かべながら柔らかな物腰でサンドパンの事を語った。
「ありがとうよ。強いね、アンタ」
「まだ、修行の途中だ」
「へえ。この先は行き止まりだ。どこに行くんだい」
「ハナダの洞窟に、野暮用があった。それが、済んだところだ。行き先は、まだ考えていない」
ハナダの洞窟。入り口は小さく、中は行き止まりで何もない。ただ、野生ポケモンが出てくるのみだ。それも、だいぶ凶暴なのが出ると言う事で、地元の連中は近づかないと聞いている。そこに、どんな用があるというのだろうか。気にはなったが、詮索する程じゃない。
そんな事よりも、目の前のこいつの強さが気になって仕方なかった。今まで戦った相手の、誰よりも強かった。並のジムリーダーだって、こいつには敵わないだろう。ニドキング1匹に、アタシの手持ち3匹は全部やられてしまった。
「ふーん。アンタ、他にはどんなポケモンを連れてるんだい」
「……ダグトリオ、ニドクイン、サイドン、ペルシアン」
「じめんタイプが多いね。好きなのかい?」
「そうだな。嫌いじゃない」
「ふーん」
思った。こいつの強さが欲しい、と。どうやったらここまで強くなれるんだろう、と。なんとか、その強さを盗めないか、と。
だからアタシは、奴に提案した。
「行く先がなければ、一緒に来ないかい。アタシは今、ジムを回って旅をしてるんだ。ニビから来て、ハナダと、これまで2人のリーダーに勝ってきたとこだ」
「……共に旅か。考えて居なかったな。面白い。
良いだろう。君のサンドパンの、成長も見たい」
「決まりだね。アタシはジータ、よろしく」
右手を差し出した。握手。奴は少し、微笑んだ。
「ああ。よろしく頼む。
——俺の名は、クレイだ」
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