月影に抱かれて、星を見送る

鐘屋横丁

     

 
 
 
 ……そうして、アジトの中をミュウツーに案内した。団員達は、ミュウツーに気づくと皆喜んだ。外に出られるようになって良かっただとか、また会えて嬉しいだとかを口にしていた。訓練所にも立ち寄った。女は、少し恥ずかしそうにしながら、こちらに手を振った。
 最奥の部屋についた。時刻はもう夕方だ。初日から歩き回って、疲れさせてしまった。ボールに戻ってしばらく休むよう、ミュウツーに命じた。
「……」
 煙草に、火をつけた。
 ミュウツーが、自分のものになった。ここまで色々と大変だったが、大きな力を得ることが出来た。まだパラメータを確認しただけだが、ミュウツーは素晴らしい力を持っている。自分のポケモンを総動員しても、勝てるか分からない程の数値だ。もし暴れられたらひとたまりもない。そういう意味では、恐ろしいポケモンを生み出してしまった。
 今は従順な子供のように思える。見慣れた寝顔は、可愛らしさをも感じる。忠誠心は、無いわけではなさそうだ。この先も、慎重に接していく事にしよう。
 扉が、開いた。
「失礼します。サカキ様……、この度はミュウツーのゲット、おめでとうございます」
 マイムが、にっこりと笑って拍手をした。
「ああ。肩の荷が降りた思いだ。お前にも、苦労をかけたな」
 ふと、ミュウツーの話していたマイムの評を思い出す。……ミュウツーは、その感情を執着と言った。だが、それが正確ではない事は分かっていた。もっと甘美で、人間らしく、そして愛でるべき感情だろう。向けられている感情に、気づいていない訳ではない。
「……一番手は、お前だった。次に続けるための、大事な役目をよくぞ果たした。
 どうだ。何か望みがあれば、叶えてやろう」
 煙草を、灰皿に押しつけた。


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