「……と。
その後は赤面してまるで話してくれなくなってしまったんだ。サカキ。僕は何か、間違った事をしただろうか」
「……ッ」
サカキは、妙な表情をした。……笑いを堪えている。
「どうした。可笑しいか。やっぱり、何か間違えてしまったか」
「いや。いやまあ、仕方のない事だ。そうだな。うむ。デリカシーが無かったな」
「デリカシー」
「女を相手にする時は、気にしなくてはいけないものだ。難しい。私も、たまに失敗する」
「むう……。お前に勝った女と話せると、楽しみにしていたのだが」
「お前には、教えておこう。私と彼女は、いわば番だ。支え合いながら、生きている」
「支え合う……」
「ああ。人間は、そうやって生きていく。
ひとりでも生きていけるが、我々はその道を選んだ。ひとりでは生きていけない人間も、中には居る」
「それで、群れるのか」
「ああ。ここも、同じだ。もう分かってるかもしれないが、行く当ての無い者が多い」
「うん。それは、感じていた」
「ポケモンも、きっと同じだろう。ひとりで生き抜くもの、支え合うもの、群れるもの」
「……僕は、きっとひとりで生きていく」
「そうだな。お前には、芯の強さを感じる。群れずとも、生きられるだろう」
「……」
いつかひとりになって、ここを出て行く。そんな事も考えていた。でも、ここに留まるのも悪くない気がしている。サカキは、いつも僕を認めてくれる。それは何だか、心地よかった。
「……サカキ。アイの事を、まだ忘れられないんだ。いや、自分で忘れないようにしているのかもしれない。時に、涙が流れる。そういう時は、ひとりでいるのが辛い。どうしたらいい」
サカキは、少し黙った。
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