「博士達にも、これを?」
「ああ。誰もみんな、似たような事ばかり考えている。……もう誰も、アイの事を、考えてもいない」
「……。アイの事は、お前が考えていればいい。お前たちは、ふたりで過ごした。アイは、お前だけのものだ」
「……そうかな」
「そうだとも。飽きるまでただただ悲しむのもお前の自由だが、早まった事だけは考えるなよ。お前は、生きるべき存在だ」
「……アイにも、同じ事を言われた。生きろって」
「なら、それを守れ。残された者が、旅立った者にしてやれる事は少ない。何か言い残されたのであれば、それをしっかり守る事だ」
「……うん」
「ふむ。ここの人間の考えを覗くのも、さぞかし、陰鬱なものだろう。他のコピーポケモンも、幼体ばかりか。何か、他の暇つぶしがあった方がいいな。
博士、ミュウツーの活動時間は、どのくらいだ」
「はっ。日に、2時間程です」
「そうか。なるべく、様子を見に来よう。
ミュウツー、欲しいものがあれば、必ず言え。叶えてやる」
「……わかった」
そうして、男は帰っていった。
人間に、何処までもまみれたような奴だった。だが、人間に対して暗い感情は感じ取れなかった。博士や他の科学者達は、人間に疎まれた記憶が必ずあった。人間への不信感や絶望が多くあった。あの男の言う通り、陰鬱なものだった。
あの男は、人間を全く恐れていなかった。多くの人間が、あの男を欲しているように感じた。それに全く動じず、自分の周りの人間をよく知り、時に信用しているようだった。
僕に対しても、そうだった。僕の事を全く恐れず、アイの話をしてくれた。それが出来るのは、普通の人間ではない気がする。
……アイ。会いたい。今日はいつもと違う人間が来た。優しくはあったけど、まとわりついていた、あの多くの人間の臭いにはびっくりした。人間たちと、どんなふうに接していけばいいのか、僕にはわからないよ。君なら、こんな時、なんて言うの……
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