続いて、パンとスープが出てくる。豆のポタージュだった。
「最近は、研究所の方には行かなくて良いの?」
「以前よりは、落ち着いてきたな。なるべく見に行くようにしているが、順調だ。無事に成長したら、そのうち見せてやろう」
「楽しみ。化石から復元したポケモンだっけ」
「ああ。最初は入手難度の高くない化石で実験していた。カブトや、オムナイトだ。無事に復元出来た。
遠く離れた大陸で、幻のポケモンの化石が見つかったんだ。色々あったが、手に入れる事ができた」
「幻のポケモン!」
女の目が輝く。いつか、本物を見せる事が出来れば、さらに輝くだろうか。
「聞いた噂では、全ての技を使いこなすらしい。そいつ自体を捕まえるために何人か団員を送り込んだんだが、ある時から報告が来なくなった」
「……」
パンをちぎっていた、女の手が止まる。
「無事だと、いいんだがな。何せ場所が遠い。追加で団員を送るわけにもいかない。
ともかく、手に入れた化石で復元を行ったが、完璧な復元には至らなかった」
「あれ、でも成長はしてるんでしょ?」
「ああ。幻のポケモンとは別の個体として、成長している。完璧ではないが、復元で得られた、貴重な命だ」
「そっか。はやく見てみたいな」
白ワインと、魚料理が出てきた。オレンジ色のソースの上に大きな切り身がある。
「そうだな。白くて、人の形にすこし似たポケモンだ。科学者達の中には、最強のポケモンだという者もいるが、さて、どうなるか……」
「最強のポケモンかあ。また凄い話だね。戦ってみたい」
「キミはまず、戦いたいと言うんだな」
女が、首を傾げる。
「おかしいかな? 戦わないと、分からないから。何を考えているのかとか、どういう風にしたいのかとか」
「いいや、ものの感じ方に正解は無いさ。キミは、最初からそういう考えだったな。バトルの中で、相手を感じる」
「うん。だから、まず戦いたい」
「……俺のときも、そうだったか?」
「……うん。最初は、みんなそう思う。それで、もっと戦いたいってあんなに強く思った人は、初めて。バトルしてない時は、今何してるんだろう、また会って戦いたいって、ずっと考えてた」
「キミなりの、愛情表現だな。光栄な事だ」
「ごめんなさい、なんか……普通に出来なくて」
「構わない。十分伝わっているよ。それに、先月は菓子をくれたじゃないか。美味しかった。俺のために作ってくれたと思うと、嬉しかった」
「そっか。あれも、愛情表現になるのか。また、作ります」
「楽しみにしているよ」
~ 5 ~