果てへの航路

鐘屋横丁

     

 
「ふう、こんな所か」
 書類に目を通し、雑務を一通り終えた。ちょうど良い時間になっていた。
「行くぞ。ペルシアン、ボールに戻れ」
 ペルシアンは満足そうだった。ボールを差し出すと、自らボールに触れて中に入っていった。
「賢い子! いつかはバトルにも出すんですか?」
「いずれは、だな。まだまだ、レベルが足りん。しばらくは愛玩用だな。猫ポケモンは、嫌いじゃない」

 アジトを後にして、タマムシにあるレストランへ向かった。カロス料理の名店だ。店内にはピアノがあり、ジャズが奏でられている。
「素敵なところね」
 女は嬉しそうだった。キョロキョロと店内を見回す。
「俺の好きな店だ。気に入ってくれたのなら、嬉しい。料理も、うまいぞ。コースで良いか」
「うん。そうします」
 コースを2人分注文し、ワインは適当なものを持ってくるように頼んだ。食前酒にはシャンパンと、ノンアルコールのカクテル。シャンパンと突き出しはすぐに来た。
「では、ホワイトデーに乾杯」
「ふふ、乾杯」
 グラスを軽く上げる。爽やかな飲み心地のシャンパンだった。
「今日は一日、製薬会社の方に居たよ。社長と呼ばれるのは、どうも慣れないものだ」
「普段は、ボスだもんね」
「ああ。そう呼ばれる方が、ずっと落ち着くな」
「大変だね。社長さんやって、ジムリーダーもやって、ボスもやって」
「どこでも、優秀な部下が居るのが幸いだな。大体のことは任せてしまっている。後から出てきて、大体の事は承認して、たまに小言を言うのが俺の仕事だ。
 ジムリーダーも、優秀なトレーナーが揃っているから、挑戦者もなかなか俺の所まで辿り着けないようになってる」
「きっと、普通の人はそんな要領良く出来ないよ。かっこいいと思う」
 女が、にっこりと微笑む。


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