甘味と、もどかしさ

鐘屋横丁

     

 その時、オーブンのタイマーが鳴った。マイムさんからミトンを受け取る。ミトン越しでも、トレイは熱かった。急いで机の上に置いて、マフィンのひとつに爪楊枝を差し込む。生地は、付いてこなかった。……完成だ!
「出来た!」
「おめでとうございます。冷やして、包みましょう」
「はい!」
 
 なんとか、綺麗に包めた。練習と同じで、マフィンは4つ。早く明日にならないかな。待ち遠しい。早く、喜んでもらいたい。胸が弾むようにどきどきしてくる。
 それに明日になれば、マイムさんのクッキーも食べられる。楽しみだな。期待で胸をいっぱいにしながら、帰路に着いた。
 
 次の日。
 日中は、大きめの公園に行ってポケモン達と遊んで過ごした。スイクンはまだあまり感情を表に出さない。でも、遊びには付き合ってくれるようになった。投げたボールをくわえて持ってきてくれる。
 フシギバナは、日光浴。ベトベトンとマタドガスは、じゃれて遊んでる。モルフォンは、おやつをカリカリ食べてる。ニドクインは池のコイキングを見てる。ゲンガーはお留守番。眠いんだって。

 夕方になったら、いよいよアジトの奥の部屋へ。入ると、マイムさんが居た。
「マイムさん、こんにちは!」
「はい、こんにちは。サカキ様は、もうすぐいらっしゃると思います。今日は一日ジムの方に居たみたいです」
「そっか、日曜日だもんね」
「楽しみですね」
「口に合うといいんだけど……」
「とても美味しかったです。きっと、大丈夫ですよ」


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