甘味と、もどかしさ

鐘屋横丁

     

 型をオーブンの中に入れた。マイムさんが、オーブンを調節してくれる。
「さて、少し時間が出来ましたね。洗い物をして、紅茶でも入れましょうか」
「はい! やったぁ!」
 ふたりで手分けをして、洗い物を済ませた。マイムさんが、紅茶を入れてくれた。とてもいい香りで、美味しかった。
「美味しいです」
「それは良かった。この紅茶は、当たりですね。今度、奥のお部屋に持っていきましょう」
「あの部屋にあるコーヒーや紅茶って、マイムさんが用意してるんですか?」
「ええ、私が。コーヒーはいつも決まった銘柄ですけどね。サカキ様はそれしかお飲みにならないので。
 ……さて。よろしければ、こないだのジョウト旅行の話をお聞きしたいです」
「わかりました! とっても色んなことがあったので、びっくりする事も多かったけど、楽しかったです」
 マイムさんはニコニコしながら、わたしの話を聞いてくれた。リニアに初めて乗った話。ポケモンを出して連れ歩いた話。自然公園に行った話。チョウジのアジトで起きた出来事。
「……そしたら、その侵入者の子達がすごく生意気なんです。入り口まで送るときに話しかけて来たんですけど、なんでロケット団なんかに居るんだって、しつこくて。タメ口きいてくるし、敬語使いなさいって言ったら、そんなに年変わらないだろって!
 アテナさんが止めてくれなかったら、そのまま喧嘩してるところでした……。子供に熱くなっちゃうんだから、わたしもまだまだ子供だなぁ」
「はっはっは。バトルには勝ったのですから、堂々としてればよろしいのに。子供の戯言に付き合うなんて、教官殿はお優しいのですね。大丈夫、面倒見のよい立派な大人ですよ」
 マイムさんが、にっこりと笑ってくれる。いつも余裕たっぷりで、人に優しくできる人。素敵だな、と思う。わたしも、こんな大人になりたい!


~ 7 ~