甘味と、もどかしさ

鐘屋横丁

     

「はい。……マイムさんのおうち、とても綺麗です。忙しいのにちゃんと植物育てられてて、すごいなあ」
「ふふ、ありがとうございます。植物は、好きですね。草木の匂いを嗅ぐと落ち着く。私の手持ちも、草タイプが多いですよ」
「あっ、そうなんだ。何のポケモンを育ててるんですか?」
「ウツボットと、クサイハナ、パラセクト、ブーバーです。あまり自信はないですけど、いつかは教官殿にお手合わせ願いたいですね」
「はい、是非!」
 そうだ。手合わせした事なかったから、わたしはマイムさんの手持ちも知らなかった。緑の髪、緑の瞳に、緑のリップ。穏やかで、いつも優しい。確かに、草タイプがぴったり!
 話してるうちに、チョコもバターも溶けた。これからが、本番。ボウルに卵を割り入れて、泡立て器でときほぐす。グラニュー糖を入れて、よく混ぜ合わせる。レシピに書いてある事をちゃんと守らなきゃと思うと、ちょっと緊張する。
「泡立て器って結構、疲れるでしょう。もっと、力を抜いて使った方がいいですよ」
「はい! ありがとうございます」
 マイムさんは、一緒にレシピを見てくれている。心強い。
 溶かしたバターを入れて、混ぜる。その次は牛乳と溶かしたチョコレート。最後に、ふるった粉を入れた。マイムさんの言った通り、少し腕が疲れて来た。
「ここは少し、慎重に行きましょう。混ぜすぎてはいけない。粉がちゃんと生地の中に入るように泡立て器を動かして、これを粉が見えなくなるまで続ける」
 マイムさんが、レシピを読んでくれた。
「はい! 難しいな……。こんな感じかなあ……。」
「そろそろ、いいと思いますよ。そうしたら、型に生地を入れましょう」
「はい!」
 型に生地を入れるのも、難航した。スプーンですくって少しずつ入れたけど、綺麗に入れられなかった。ちょっと、汚くなってしまったけど、大丈夫かな。
「では、焼いてみましょう。180度のオーブン30分ですね」


~ 6 ~