甘味と、もどかしさ

鐘屋横丁

     

「ありがとうございます!やっぱり、マイムさんに相談して良かった。
 本当は、もっとちゃんとした物を作りたかったんだけど、今のわたしには溶かして固めるだけでもいっぱいいっぱいで……」
「……。
 もし良ければ、一緒に作りませんか。私の部屋で。一通りの道具は、揃ってますよ」
「えっ! ぜひ、お願いしたいです!」
 願ってもない提案だった。思わず、大きな声が出てしまった。
「ふふ、ではそうしましょう。一緒に美味しいものを作りましょうね。今日中に仕事を片付けるので、明日でいいですか? まずは、練習してみましょう。後は、13日も空けておきますので。こっちが本番です。
 為せば成る、為さねば成らぬ何事も、という言葉もあります。きっと出来ますよ」
「はい! 貴重なお休みなのに、すみません」
「良いんですよ。こういうイベントでもないと、なかなか休もうという気にならないですから」
「……いつもは、休んでないんですか?」
「勿論、休む時もありますよ。でも大体、何がしかの雑用はありますからねえ。あとは、奥のお部屋のお掃除とか……。
 ロケット団は、私の生きがいですから。こういうの、ワーカホリックって言うんでしょうね。サカキ様も、きっとそう! ジムリーダーとの2足のわらじだなんて、考えられない事です」
 そう言うとマイムさんはため息をついて、肩をすくめた。大げさなリアクションが、なんだか可愛い。
「確かに、ボスはいつ寝てるのか心配になる時があるかも」
「そうでしょう、そうでしょう! たまに貪るように仮眠を取られてる時があって、とても心配です。教官殿からも、もっと休むように言って下さい!」
「ですね。分かりました!」
 ボスの話になると、わたしたちはどうしても熱くなる。


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