西へ/乾いた大地

鐘屋横丁

注意書き

ゲーム内細部設定の違いはご容赦ください(覚える技、生息地等)。
名前ありオリ幹部が一人います(#3〜 マイム)。
◆簡易あらすじ:トキワジムで最後の戦いに敗れたサカキだったが、少女はロケット団の解散は望まなかった。少女はロケット団の戦闘教官となり、世界征服の野望達成のためサカキ、マイムらと共に邁進する日々を送る。

西へ/乾いた大地

     

 タマムシシティにある、ホテルの部屋。そこがいつもの場所だった。我々は、2度交じり合い——横になっていた。
「やっぱり、悔しい」
 ベッドの上で、女は、ぽつりと呟いた。
「ずっと、昨日の事考えてる。何がいけなかったのかな……ヤミカラスをもっと、警戒すべきだった」
「こんな時までバトルの話か。教官殿は熱心だ」
 少し、妬ける。だが、バトルに対して熱心な所は嫌いではない。むしろ好いていた。
 昨日のバトルを思い出す。ヤミカラス。ゴローニャ。ガルーラ。ニドキング、そしてサイドン。皆良くやってくれた。最後に立っていたサイドンに、自分が重なった。必死にしがみついて得た勝利だった。その身がどんなに、泥にまみれようとも。
「あー、私もジョウトに行きたいな。決めた、次はジョウトを旅しよう」
「ほう。……旅に、出るのか」
 胸が、一瞬、どきりとした。女は慌てながら続ける。
「あっ、今すぐにとか、そういう意味じゃないです。ここに来る前は、旅ばっかりしていたから、つい。癖で」
「次の休暇にでも、行くといい。ふむ。俺もたまにはあちらの支部に顔を出さないといけないな」
「うーん。今は、いいです。……一緒に居たいし」
「そうか。
 なら、一緒に行くか」
「えっ!」
 もじもじとしていた女の表情が、ぱっと明るくなった。
「あくまで、支部の視察がメインだ。じっくり観光というわけにはいかない、それでも良ければだが」
「行きます!」
「俺も、次は自分のヤミカラスが欲しい。明日、早速日程を調整しよう」
「いいな、わたしも何か捕まえよう。楽しみになってきた」
「キミとふたりで、と言ったらマイムに散々茶化されるだろうな」
「うん。すっごくニコニコして、からかって来そう」
「ふん。まあ、構わん。視察に戦闘訓練の教官を連れて行っても、何もおかしな事はないだろう」
「ふふ。なんだか、今日はご機嫌だね」
「キミが悔しいのと理由は同じさ。……ずっと負け続けた相手を、やっと負かす事ができた」
「むー……」
「負けたのは、初めてと言ったか?」
「うん」
「それは、俺も同じだった。キミが、初めてだった」
「あっ、そっか……考えた事なかった……」
「キミの事をずっと考えていた。手持ちの事も、戦い方も、ずっとだ。どんな時、どんな表情をするのかも、全部」
 それは執着というよりは、殆んど、恋慕に近い。言いながら自分でそう思った。幾夜を共に過ごそうとも、まだ手に入らないものがある。そんな気分だった。時にそれがもどかしくて、激しく抱いた。女は決して、嫌がらなかった。細い身体で、全てを受け入れようとしていた。それがまた、情欲をかき立てた。
「……」
「敗北の味を、しっかり噛み締めておけ。そして、また勝てばいい。もっとも、俺は負けるつもりはないが」
「はい。わたしも、次は負けない」
「うむ。いい返事だ。
 ところで、そろそろ続きをしてもいいかな。今日の俺は、ご機嫌だからな」
「う……はい」
「優しくしよう。それは約束する」
 耳元で囁く。女の身体が、ぴくりと反応する。
「ん……」
 優しく口づけて、部屋の明かりを落とした。


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