千夜一夜

鐘屋横丁

注意書き

サカキ×オリ主♀です。軽い容姿設定があります。軽めの性描写があります。
夢かどうかは若干怪しいのですが気に入ったので載せます。誰かに刺さると嬉しいです。

千夜一夜

     

 これは私の、美しい思い出の話。

 むっとする夏の夜。暑いのは、あまり好きではありません。私は涼しさを求め、喉の渇きを癒しにいつものバーに駆け込みました。
「マスター、ギムレットを頂戴」
「かしこまりました。いつもありがとうございます」
 お店はいつもより混んでいるように見えました。あちらこちらで会話が聞こえます。
 カクテルを飲んで、ナッツを齧っていると、1人の男の人がこちらに近づいてきました。
「ひとりかい? 隣、いいかね?」
「ええ、どうぞ」
 感じの悪い方ではありませんでした。整った顔立ちをした、私より少し年上の人でした。
「レディ。この店にはよく来るのかい?」
「ええ。家が近くて。落ち着けるいいお店よ」
「いつも、ひとりで?」
「そうね。お酒が好きなものですから……ふふ、なんだか恥ずかしいわ」
「恥ずかしがる事は無いさ。私もよく、バーにはふらっと入るよ」
 そう言って、彼はにこりと笑いました。魅力的な笑顔。人を惹きつけるオーラを感じます。きっと、さぞかしモテるのでしょうね。
「ほう、身寄りのないポケモンの世話を。素晴らしいお仕事だ」
「大した事じゃないですよ。好きだから、やっているだけで。サカキさんは?」
「私はただのポケモントレーナーです。旅をしているというよりは、目についたポケモンや街を目指してフラフラしてますよ」
 サカキと名乗った彼は、そう言ってははは、と笑いました。でも、きっとバトルは相当強いはずです。そんな雰囲気があります。

 ほとんどポケモンの話をして盛り上がっていたところで、お店が閉店の時間になりました。
 店の外に出ました。あのむっとする夏の湿気が、またあたりを包みます。
「レディ。今日は、ありがとう。楽しかった」
「良ければ、私の家に来ませんか。お酒も沢山ありますよ」
「おお、それは是非!」
 彼は心底嬉しそうな笑顔を浮かべました。初対面のはずでしたが、もうそんな気はしないくらい私は彼を好いていたし、彼も私の事が嫌いではなさそうでした。
 お客様を家に連れて帰ると、放し飼いにしているニドリーナがもじもじとしながら寄って来ました。
「よしよし」
 彼が頭を撫でると、ニドリーナは嬉しそう。続いて背中を撫でると、人見知りのニドリーナが大喜びです。可愛がり方を良く知っている。やっぱり、腕の立つトレーナーなのでしょう。


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