夜の王

鐘屋横丁

     

 唇を重ねた。舌を出す。女はどこか嬉しそうに、舌を絡めてくる。しばらく、夢中で互いの舌を味わって、どちらからともなくそっと唇を離した。
「えへへ……ありがとうございます」
 女は嬉しそうだ。もう一度、抱きしめた。今度は優しく。
「礼を言うのはこちらの方だ。ありがとう。いい夜だった」
「はい」
「行こうか」
 抱きしめていた腕を解き、女の左手を握った。
「……はい!」
 笑顔になった女の手を引いて、扉の外に出た。階段を登り、アジトの外に出ると、夜空には満月がきらめいていた。
 まだ、夜は長い。ふたりの時間は、もう少し続く。


~ 7/7 ~