注意書き
夢主はロケット団幹部です。バレンタインのお話です。
夢主はロケット団幹部です。バレンタインのお話です。
早く。早く早く。
ロケット団本部の中を、一目散に走る。もう、夜になってしまった。
今日は外の任務だった。下っぱ達に指示を出しながら、大量発生したレアポケモンを捕まえる。成果は上々だった。けれどそれと引き換えに、本部に戻るのが遅くなってしまった。
「……まだ、いらっしゃるかな。先にお帰りになってても、おかしくない、から……」
階段を下って、急いでボスの部屋へ。手には、贈り物を抱えて。
今日はバレンタインデー。昨日は夜更かしをして、本とにらめっこしながらブラウニーを作った。味見はした。美味しいはずだ。
息を切らしながら走って、部屋の扉を開けた。
「ボス!」
そこにはいつものように奥の椅子に座って、ペルシアンを撫でるボスの姿があった。ひとまず、ほっとした。
「やあ。随分と、遅かったな」
ペルシアンの喉の辺りに手をやりながら、ボスは微笑む。
「はい。……もしかして、お待ち頂いて……?」
「おかしいか? 可愛い部下の帰りを待つのは」
「い、いえ。お待たせして、申し訳ありません!」
「気にするな。私が好きで待っていたのだ。今日は来客も多かったし、退屈ではなかった」
「来客……」
ふとボスの机に目をやると、包装されたお菓子がどっさりと1つの山を作っていた。
「わっ。す、すごい」
「年々増える一方だ。ポケモンに運ぶのを手伝って貰わねばな」
「あの、私も」
ボスに、視線を向けられる。
言葉がうまく出ない。心臓がドキドキする。バレンタインだと言って、渡せばいいだけなのに。先程の全力疾走で、頭もうまく回らない。
「こ……これ」
震える手で、包みを差し出す。
「キミもか。大切に頂くとするよ」
ボスが席を立った。こちらに歩いてきて、私の手から包みを受け取って下さった。
「はい……でも、こんなにいっぱいあったら分からなくなっちゃいますよね」
「そんな事はない」
ボスは包みを、机の上のお菓子の山から少し離れたところに置いた。
「分かるか? これのために、今日はキミを待っていたんだ」
ボスが更に近づいてくる。また心臓がドキドキする。どうしよう、聞こえちゃったら恥ずかしい……。
ぎゅうと、優しく抱きしめられる。心臓の音は更に高鳴り、息は切れ切れになった。
「ありがとう。大切に食べる。……息が切れているな。走ってきたのか」
耳元で囁かれた。目が回りそうだ。なんとか、腕を背中に回した。
「はい。早く……渡したくて。帰られちゃったら、どうしようかって」
「こんな日に、キミを置いて帰るものか。どうも、冷たい男だと思われているようだな」
また、耳元で囁かれる。囁かれるたびに、ぞくりとする。耳が熱を持つ。
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