きらきら星

鐘屋横丁

注意書き

コサブロウの手持ちポケモンに捏造があります。(ムクホーク、スマホロトム)
 
アニポケ新無印第95話「サラバ!さすらいのロケット団!」を見て気持ちがおさまらずコサヤマを書きました。2人が幸せでありますように……🙏

きらきら星

     

 屋根の上で、ポッポが鳴いている。それが朝の訪れの合図だった。いつも仕込みのために早起きをしなければならないが、この季節の朝は、少し冷える。作業の前に、温かいコーヒーを飲んだ。
「……」
 稲妻のような、連中だった。再会出来た懐かしさがまだ胸にあるのに、とっとと去っていってしまった。
 ムサシ、ニャース、ソーナンス。こないだまで店を手伝ってくれたが、ある日自分の居場所はここではないと言って、出て行ってしまった。コジロウは居なかった。何か理由があるのだろうか。顔が見たかったな。
 ムサシは言った。自分がロケット団を辞めたことを、ヤマトに聞いたと。彼女に会ったのか、彼女は今どうしているのかと問い詰めたかったが、出来なかった。
 自分ではない男と楽しそうにしていた、なんて話を聞くのが怖くて、つい躊躇った。……そんな事は、どうでもいい事だ。自分には、関係のない事。自分にそう言い聞かせて、胸の奥に思いを閉じ込めようとした。
 ヤマト。ロケット団のかつての相棒だ。共に沢山の任務をこなし、サカキ様にお褒めの言葉を頂いた時は喜びを分かち合い、失敗した時には慰めあった。
 我々は、男女の仲ではなかった。けれど心は通じ合っていると思っていたし、自分の目には、彼女は美しく見えた。
 ……だが、彼女はある日言った。
「ロケット団を辞める」と。

「はい、メロンパンが3つですね。毎度ありがとうございます」
 常連の客が店を出て行った。今日は、これで店じまいだ。掃除をして、売上を確認する。
 この頃は、日暮れが早い。夕焼けが見えたと思ったら、すぐ真っ暗になってしまう。ぼうっと、光り始めた星空を見ていた。
「……」
「コサンジ、寂しそうロト。誰かに会いたいロト?」
 スマホロトムが服のポケットから飛び出る。
「コサブロウだ。何度も訂正させないでくれ……」
「ごめんロト。でも寂しそうなのは本当ロト。心配ロト」
「……寂しい、か」
 今日一日、頭の中にチラつくのはヤマトの姿ばかりだ。彼女の笑顔。不機嫌にむくれた顔。怒った顔。落ち込んだ時に見せる涙。楽しそうに、自分の名前を呼んで駆け寄ってくることもあった。

 ……ロケット団を辞めると言われて、あの時は激しく動揺した。何故、そんな事を言うのか。自分に何か至らない点があれば直すから。頼む。考え直して欲しい。
「そんなんじゃないの」
「ずっと前から考えていたんだけど、なかなか言い出せなくて」
「ロケット団だけが人生じゃないかなって」
「ごめんなさい、コサブロウ」
 少し申し訳なさそうに笑う。胸がちくりと痛んだ。彼女が辞表を出して暫くしてから、自分も辞めた。彼女以外のパートナーと組む気には、とてもならなかったからだ。サカキ様は、止めなかった。
「お前たちは、私とロケット団のために実によく働いてくれた。
 最後の命令だ。ヤマトのように、自分の道を探せ。見つからなかったら、その時はまた戻ってくるといい。ロケット団は、優秀な団員をいつでも歓迎する」
 最後まで寛大なお方だった。色々考えてみたが、ポケモントレーナーとして生きる道は考えられなかった。小さな町で、元々興味のあったパン屋を営んで暮らす事にした。
 彼女は今、どうしているだろう。ああ、やはり、ムサシ達からもっと話を聞いておくべきだった。


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