「……。
俺はもう、キミ無しには生きられない。
キミは荒野に降る雨で、砂漠のオアシスだ」
「うん」
「だが、俺は汚れたけだものだ。今日のように乱暴にしたり、いつかのようにキミの視力を奪ったり、拘束して、壊してしまいたいと思うこともある」
「うん」
「それでも、構わないか?」
女は手を伸ばす。ぎゅっと、抱きついてくる。
「うん。
きっと、わたしたちはそうやって、愛し合っていくんだと思う。泥まみれになりながら、抱き合っていく」
「そうか。泥か。確かに、泥まみれだな。言うなれば、愛の泥か」
「ふふ。素敵な言葉」
口付けをした。幸福な夜はまだ終わらない。もう、あの日にトキワジムで感じた冷たさはない。女の身体と心の暖かさが、確かここにある。
……ああ。自分は、心から幸せだと言える。
~ 11/11 ~