進メ、我ラ火ノ玉

鐘屋横丁

     

 身近な変化としては、テレビや雑誌が少し変わった。今まではポケモンのものばっかりだったのに、人間のための料理とか、人間のための音楽を扱ったものが増えた。ドラマに凝った恋愛ものがかなり増えて、わたしはお気に入り。
 他の地方の四天王やチャンピオンも順調に撃破。なんとか団っていうのが邪魔してきた時もあって、どこの地方も同じなんだね、って言ってボスと笑った。
 入団希望者もかなりいるみたい。マイムさんが面接してるみたいで、人事の仕事も楽じゃないですってこぼしてた。
 そうそう、マイムさんが忙しくなったから、アポロさんもカントーで働く事になったんだって! 毎日遅くまで働いては、働きすぎだってボスに怒られてるみたい。でも怒られてるアポロさんはどこか嬉しそう。なんでだろう……ちょっと怖いな……。
 わたしは相変わらず戦闘教官だけど、ボスが出かける時は護衛。色んな地方に一緒に行ったな。ジョウトも、ホウエンも、シンオウも、他の国にも行った! どこに行った時も、お仕事が終わったらボスと美味しいものを食べてフカフカのお布団で寝た。毎日忙しいけど、とっても幸せ!
 
 
 
 世界征服も楽じゃない。この国は完全に掌握したも同然で、もう反乱分子も減っていくだろうが、それはこの国がポケモンバトルの強ささえあれば誰でものし上がれる国だからだ。
 他国はそうは思っていないところも多いし、簡単に勝たせて貰える国も多くはないだろう。
 だが、やり遂げてみせる。世界征服こそが我が野望であり、いつの間にか倍に増えた団員達の悲願だ。
 煙草に火をつけた。
「……サカキ様、お時間です」
 マイムが少し申し訳なさそうに告げる。
「分かった。これだけ、吸わせてくれ」
 本拠地は、相変わらずタマムシの地下だ。大分古ぼけてきたが、居心地がいい。規模を考えるとそろそろ移さなくてはならなくて、気が重い。
 煙を吐く。煙草を、灰皿に押しつける。
 さて。今日も一日。悪だくみの始まりだ。
「待たせたな。行こう」
「はい」
 にこりと笑うマイムを従わせて、扉の外に出た。


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