進メ、我ラ火ノ玉

鐘屋横丁

     

「負けたよ、サカキ、ミュウツー。文句のつけようがないふたりだ」
「フッ。当然だ」
 ミュウツーはドヤ顔をして腰に両手を当てる。くそっ。負けたのが悔しくなってきた。
「グリーン。君も、強くなったな」
「ありがとう、ございます。……で、これからどうするんだ? チャンピオンになるのか?」
「まさか。ここの国民の心を掴むのはポケモンバトルが一番手っ取り早い。そのために挑戦させて貰っただけだ」
「はは。言えてる。告知したのは朝なのに、この盛り上がりだからな」
「これから他地方の四天王、チャンピオンも戦って同じ事をする。全てが終わった時、この国は私のものだ」
「そうだな。そうなれば、皆受け入れちまいそうだ。さすが、良く分かってる。
 俺は応援する事は出来ないけど、その野望が実る日を見てみたいと、ちょっと思ってるぜ」
 サカキは少しだけ笑った。
「そうか。ありがとう、また会おう」
「ああ。次は、負けない」
 互いに背中を向けた。……あーあ、負けちまったよ!
 
 
 
「ボス!」
「サカキ様!」
「サカキ様……」
 もう、我慢はしなかった。みんなでボスに抱きついた。マイムさんはポロポロと泣いていたし、わたしも少し泣いてしまった。アポロさんも泣きそうなのを堪えてた。
「おっと。待たせたな。お前達、みんなひどい顔をしているぞ。
 ……凱旋だ。帰ろう、あの静かな奥の部屋が恋しい」
「はいっ!」
 3人で返事をした。

 ……それから。
ボスは国の偉い人に会いに行って、難しい話をしてた。わたしは変わらず護衛でついて行ったけど、話の半分も分からなかった……。やっぱり、ボスはすごい。これだけ頭が良いのに、ポケモンバトルもちゃんと強いし、人に慕われる力もある。
 ボスが言ってたけど、この国は、これからゆっくり変わっていくらしい。ポケモンだけじゃなくて、人間が生きやすい国にしたいって言ってた。お父さんが旅に出てしまって、ひとり親の家庭に支援がされたり、教育に力を入れて、旅に出てもいい年齢が引き上げられるみたい。今は子供がすぐ旅に出ちゃうもんね……。あとは、色んな病気とか、人間に関する研究にも支援がされるらしくって、研究者どもは大喜びだ、って言ってたな。


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