進メ、我ラ火ノ玉

鐘屋横丁


注意書き

!注意!今回は夢ではなく、今までの設定を使ったロケット団が世界征服するお話です。#10のミュウツーの話の続きをイメージしています。
名前ありオリ幹部が一人います(#3〜 マイム)。がっつり喋ります。
いつもより長めなのでお時間のある時にでも、どうぞよろしくお願いします。

◆簡易あらすじ:トキワジムで最後の戦いに敗れたサカキだったが、少女はロケット団の解散は望まなかった。
少女はロケット団の戦闘教官となり、世界征服の野望達成のためサカキ、マイムらと共に邁進する日々を送る。



◆表紙協力→ガバ子さん(https://www.pixiv.net/users/2015447)

進メ、我ラ火ノ玉

     

 風に乗って、木々から枯葉が落ちる。踏むと、カサリと音が鳴る。秋が深まってきた。少し前までは紅葉していた木々が、その葉を次々に落とす。季節は冬へと準備を進めていた。
 時は、来た。
 これまで細々とやっていた計画や研究が実を結ぶ。戦力も、問題ない。最強の軍団がその時を今か今かと待ちわびている。ミュウツーもいつでも戦える状態だ。
 今日は、普段は各地で任務にあたっている幹部たちを呼び寄せて、作戦について会議をしたところだ。幹部達の士気は高い。やっとこの日が来た事を喜んでいる者ばかりだった。皆が気持ちを高揚させたまま、会議は終わった。
 戦闘訓練所へ向かう。ミュウツーの様子が見たかった。基礎能力の極めて高い奴だが、戦闘経験は殆どない。今回の作戦が、いわばデビュー戦だ。そのため、みっちりと訓練を行なっている。訓練所に近づくと、歓声が聞こえた。暇な団員達が見ているのだろう。
「頑張れー! 教官ちゃん!」
「ミュウツー! カッコいいぞー!」
 訓練所が一望できる窓にかぶりついて、何人もの団員達が声援を送っていた。サボるんじゃない、と言ってやりたいが、それは自分の仕事ではない。
 訓練所の扉を開けた。バトル場に近づく。バトル場には女とミュウツーがいた。女は苦しい顔をしているが、ミュウツーは余裕そうだ。
「モルフォン!シグナルビーム!」
 女が命じる。モルフォンは羽ばたきながら光線を出す。
 ミュウツーは素早く動いて避ける。女のモルフォンのレベルはかなり高い。食らってしまえば、ミュウツーでもかなりのダメージになるだろう。軌道を上手く読んで避けているようだ。モルフォンがビームを出すのを止めた一瞬、ミュウツーがサイコキネシスを最良のタイミングで叩き込んだ。
「モルフォン 戦闘不能」
 判定マシンが状況を告げる。女の手持ちは後1体だ。ミュウツーはかかって来い、と言わんばかりに腕をクイと上げた。
「行って! スイクン!」
 女はモルフォンをボールに戻し、スイクンを代わりに繰り出した。何かスイクンの耳元で囁いた。スイクンは頷くと、ミュウツーから距離を取り、バトル場を跳ね回った。
「れいとうビーム!」
 スイクンは跳ねながらビームを放つ。あまり高い威力ではなさそうだ。……明らかに加減している。ミュウツーもそれを察したのか、ややイラついたような素振りを見せる。サイコキネシスを放つが、スイクンはギリギリで間合いに入らない。広いバトル場を生かし、ヒョイヒョイと逃げ回っている。
 しばらくそうした応酬が続いた。ミュウツーのイラつきはさらに増しているようだった。……明らかな誘いだな。乗ってしまうようでは、ミュウツーもまだ未熟と言える。一方で、スイクンはこれからどうするのだろう。何か策があるように見える。
 ミュウツーはれいとうビームをいくつか喰らいながら、真っ直ぐスイクンに突っ込んで行った。驚きの表情を見せるスイクン。目の前まで迫って、ミュウツーは右手をスイクンに伸ばした。スイクンの身体がぴたりと動きを止める。かなしばりだ。ミュウツーがにやりと笑う。左手でエネルギーを集中させ、サイコキネシスを放つ——
「スイクン!ミラーコート!」
 女が叫んだ。スイクンの身体が、虹色に光る。ミュウツーの放った一撃はスイクンに確かに命中したが、ミラーコートは受けた攻撃を反射させるわざだ。受けた攻撃が強いものであれば、相当なダメージが返る。それを真正面から食らって、ミュウツーは地面に転がった。
 スイクンもサイコキネシスを食らってはいたが、なんとか立っていた。
「ミュウツー 戦闘不能」
 判定マシンが勝敗を告げる。


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