蠱惑

鐘屋横丁


注意書き

RR団サカキ様×R団サカキ様です。腐です。R18です。RR団サカキ様がボスズを全員抱いてる描写があります。

とにかくこの2人は別人であるという強い気持ちから生まれました。お口に合わなければぺっとして下さい。よろしくお願いします。



◆表紙協力→ガバ子さん(https://www.pixiv.net/users/2015447)

蠱惑

     

 鳥ポケモンの囀りで目を覚ました。朝日はまだ、昇ったばかりだった。風はそよそよと吹き、涼しさが心地良い。どこからか、花の香りがする。草ポケモンが近くに居るのだろうか。気持ちの良い、朝だった。
 あてもない旅を続けていた。……あの日、少年に敗北し、全てを失った。いや、捨てた、と言うべきか。とにかく、自分には重過ぎた荷を無くした。何の肩書きもない、一人の男になった。
 支度をして、今日も道路を進む——つもりだった。
「待て」
 歩みを進めようとした時、背後から男の声がした。振り返る。
 そこには、黒いスーツに黒い帽子を被った男が立っていた。顔は、帽子のせいでよく見えない。とはいえ、自分も似たような格好だった。
「……誰だ」
「サカキ。驚くなよ」
「……!」
 自分の名を知っている。追っ手か! 反射的に手がボールに伸びる。……もう、自分を追いかける者も居ないと思っていた。警察の類いには、見えない。ただの物好きな人間か?
「おっと。勘違いするなよ。お前じゃない。私の名前だ」
 男はニヤリと笑い、帽子を取った。
「お……お前は」
 そこには、自分がいた。
 黒いスーツには、Rのエンブレム。黒い髪に、黒い瞳。不敵な笑みを浮かべている。Rのエンブレムは、朝日を受けて虹色に光った。
 最初は、メタモンのへんしんの類いを疑った。次に、ラムダの——かつての部下の——変装を疑った。だが、自分の本能がそれは違うと言っている。あれは紛れもなく自分である、と……。
 心臓がどきりと音を立てて、鼓動を早くする。身体から、汗が吹き出す。
「信じられない、と言った顔だな。これでどうだ?」
 男は、紫のボールから1匹のポケモンを出した。
「なん……だと……」
 人に近い姿。白い身体。長い尾。そのポケモンの事は、よく知っている。かつて組織の研究所で生み出し、逃げ出した1匹。
「ミュウツー……」
「お前はよく知ってるはずだ、コイツの事を。お前の右腕になるはずの1匹だった、コイツの事を」


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