果てへの航路

鐘屋横丁


注意書き

ゲーム内細部設定の違いはご容赦ください(覚える技等)。
名前ありオリ幹部が一人います(#3〜 マイム)。
二人が媚薬えっちする話です
◆簡易あらすじ:トキワジムで最後の戦いに敗れたサカキだったが、少女はロケット団の解散は望まなかった。少女はロケット団の戦闘教官となり、世界征服の野望達成のためサカキ、マイムらと共に邁進する日々を送る。

◆表紙協力→ガバ子さん(https://www.pixiv.net/users/2015447)

果てへの航路

     

 大分、春が感じられる日が増えて来た。道行く先々で見る花の蕾は膨らみ、野生の草ポケモンを見かける事も多くなってきた。
 春は、別に嫌いではない。ただ、いつまでも時間が止まっているような気がして、気づけば無益に時間を過ごしてしまう。物思いに耽るのには、向いていない。
 今日は、ロケット団の表の顔の一つである、製薬会社に来た。ポケモンにも人にも優しい薬を……。そんなキャッチコピーで、テレビのCMもいくつか打っている。文字通り、ポケモンと人間のどちらにも効く商品を取り扱っている。
 ポケモンと人間は、遺伝子がかなり似ているらしい。昔は同じ種の動物であったと言う研究もある。そこに目をつけ開発したのが始まりだ。ポケモンのための薬は数多かったが、人間の方は研究が遅れていた。ポケモンの薬の成分のうち、人間にも利用できるものはないか。試しに鎮痛剤を作らせたところ、うまく行った。今は、ポケモンセンターや病院でもよく使われている。他の薬も、次々と開発が進んでいる。
 経営は順調だった。最初はタマムシで細々とやっていたが、今はヤマブキの一等地にオフィスがある。
「社長! おはようございます」
「ああ、お早う」
 ロケット団の事を知るものは、上層部の内ほんの2人か、3人程度だ。あとは一般の社員で構成されている。
「新製品の売り上げは好調です。特に、若い女性に人気みたいで」
「パッケージデザインを変えたのが、良かったな。手に取りやすくなった。直前に製品開発部とデザイナーが急に変えると言い出した時は、どうなることかと思ったが」
「そうですね、あの時は焦りました……。それで、他にも見て頂きたい物がありまして」
「順番に聞こう。今日は、この後は特に予定はない」
「はい!」
 殆んどが承認するだけの、山積みの書類。部署の視察。研究成果の確認。取引先との挨拶。会議に次ぐ会議。やっている事は、ロケット団でもここでもあまり変わらない。最後の会議が終わった時は、夕方になっていた。
「ボス」
 人のいなくなった会議室で、ロケット団員の社員が、小声で話しかけて来た。
「何だ」
「例のものです。作らせましたよ」
 そう言って、ポケットから薬を取り出した。液体が、細長い透明な容器に入っている。量は、ほんのわずかだ。傾けると、重みを持ちながら動く。柔らかい、ゼリーのようにみえる。
「頼んでいたものか。早かったな。臨床試験は、一通り済んでいるだろうな」
「はい。勿論です。このまま、商品化しようと思えばすぐにでも」
「これで、1回分か?」
「はい。人でもポケモンでも、1回分です」
「ご苦労。これからも、何か頼むかもしれん」
「その時は、また……。お任せ下さい」
「うむ」
 一礼すると、団員は部屋から出て行った。 
 薬を、鞄にしまう。深く追及しない奴で、助かった。殆んど職権濫用だ。まあ、いい。一番最初に薬を作った時も、自分の片頭痛のためだった。きっかけが何でも、開発が進めばいずれ会社のためになる。良い事には違いない。

 外に出た。夕日が、眩しい。空を見上げると、鳥ポケモンが群れを作り飛んでいた。日が出ている時間も随分と長くなった。今日は、3月14日。ホワイトデーだ。何か、菓子を買って帰らねばならない。寄り道をする事にした。


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