甘味と、もどかしさ

鐘屋横丁

     

 
 ルームサービスの、飲み物を頼んだ。
「すこし、休憩しようか。菓子を食べよう」
「はい! マイムさんのクッキー、ずっと食べたかった」
「きっと、キミの菓子が甘いから、敢えて甘くない菓子にしたんだろう。そういう奴だ」
「あっ、そうか……。すごいな、優しい……」
 マイムさんのクッキーは、しょうがの香りが優しい。ほのかに甘かった。とても美味しくて、何枚でも食べられそう。
「うむ。キミのマフィン、とても美味しい。甘いものはなかなか食べないが、嫌いではないな。またいつか、何か作ってくれ」
「はい! 本当に良かった。口に合うかが、心配で……」
「問題ない。これは、来月はしっかりお礼をしないといけないな」
「えへへ。楽しみにしてます」
 上手くいって、本当に良かった。慣れない事だったけど、挑戦してみて良かった。
「……さて。俺はまだまだ、味わい足りない」
 顎を掴まれた。目と目が合う。
「もう少し、付き合ってもらうぞ。夜は、まだ長い」
「……はい」
 キスが、また降ってくる。優しく、触れるだけのキス。期待で身体が火照るのが、自分でも分かる。

 今夜は、長くなりそうだ——


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