ハンディキャップ

鐘屋横丁

注意書き

ポイピクのキャプションには
ポケカポケカポケカ〜!チェスチェスチェス〜!うおお〜!!!
としか書いてませんでした。
ポケカ(サカキのカリスマ)にチェス盤が描いてあって狂った時のSSです。

ハンディキャップ

     

「君、チェスは分かるか」
 サカキ様は、唐突にそう仰った。
「ルールくらいは……」
「やってみないか」
 チェス盤が机の上に置かれる。サカキ様は自信がありそうだ。強そう。
「えっ、でも本当、勝負にならないですよ」
「そうだな。では、私はクイーンとルークは使わない。それ位で丁度いいだろう」
 それはとても、大きなハンデだ。クイーンは一番強い駒だし、ルークも無しとなるとかなりきついだろう。もしかしたら、勝てるかもしれない。
「分かりました」
「フフ。やるからには、真剣にやろうじゃないか」
「はい。頑張ります」
 サカキ様は、ニヤリと笑った。
「賭けをしよう。私が負けたら、なんでも君の言う事を聞こう」
「えっと、じゃあ、私が負けたら……?」
「同じだ。私の言う通りにして貰う」
「うぅ……」
 何だろう。ちょっと怖いな。だけどもう、やると言ってしまったし、何より大きなハンデがある。やってみよう。

 戦いは、一方的に終わってしまった。私のポーンも、ルークも、ナイトも、ビショップも、遂にはクイーンも、あっと言う間に取られてしまった。
「チェックメイトだな」
「負けました」
「こんなものか。もう少し、粘りを見せて欲しかったな」
「すみません……」
 がっかりさせてしまっただろうか。不甲斐なさに、頭が下がる。
「良い。暇潰しに付き合わせて、こちらこそすまなかったな」
 サカキ様が、駒を片付ける。その顔は満足そうだ。よかった。
「い、いえ……。えっと、それで、言うことを聞くというのは」
「そうだったな。話の続きは、夜にしよう」
 じっ、と私の目を見つめる。その目で見つめられるといつも、胸がドキリとする。
「……分かりました」
「今度は、ハンデは無しだ。いいな?」
 そう言って、悪戯っぽく笑う。その意味を深く考えようとすると、胸のドキドキが止まらない。
「……はい」
「楽しい夜になるといいな」
 その背中をぼーっと見送るしか出来ない私を残して、サカキ様は部屋から出て行ってしまった。