注意書き
フォロワーさんが考えたあらすじにタダ乗りしました。ムが「お仕事」で借金を返済する話です。モブムサ要素ありなので気をつけてください。
フォロワーさんが考えたあらすじにタダ乗りしました。ムが「お仕事」で借金を返済する話です。モブムサ要素ありなので気をつけてください。
スロットの、リールが回る。ボタンを押す。図柄が現れる。その繰り返し。たまに小さな当たりがあって、払った分が少し戻ってくる。
天井を仰いで、ため息をつく。青空の壁紙が貼ってあるのを見るたび、本当の空の下に出られるのはいつなのかと途方に暮れる。
事の始まりはこう。
ある日、サカキ様に呼び出されたあたしは、借金が膨らみに膨らみまくってる事を怒られた。だってー、仕方ないじゃない。メカを作ったりするの、お金かかるし。はいはいすいませーんで流そうと思ったんだけど、その日はそれじゃ済まなかった。
「ムサシ。お前にはしばらく、ロケットコンツェルン経営のカジノで働いてもらう」
「カジノ……ですか?」
「うむ。明日からだ。すぐに働けるように手配してやる。返済が終わるまでは帰さない。覚悟しておけ」
「分かりました」
カジノねえ。お金持ちが沢山来そう。その時は、それくらいのぼんやりとした考えだった。その日はアジトに帰って、コジロウ達にその事を話した。
「カジノで働くのニャ?」
「そ。しばらく別行動になるから、あんた達もしっかりバイトしときなさいよ」
「ちょっと、おかしくないか? 俺たち全員で作った借金なのに、ムサシだけに返済させるのか?」
「しょーがないじゃない、サカキ様の命令なんだから。がっぽり稼いでさっさと帰ってくるから、大丈夫よ」
「そっか……。なんか、ごめんな」
「気にしない気にしない! さ、明日早いから今日は早く寝るわよ」
コジロウ達と交わした、いつもの会話。あれから何日も経ってるけど、まだ鮮明に思い出せる。……なんでだろう、忘れるのが怖い。
カジノの仕事は簡単だった。飲み物を持って行ったり、メダルが入った箱を運ぶだけ。服装がバニーガールなのはちょっと恥ずかしかったけど、なんでも着こなせるあたしには小さな問題だった。
カジノの通貨は全部メダル。なんと、お給料もメダルだった。食べ物や飲み物もそれで買えた。あたしの借金ノルマは、メダルに換算すると9999枚。カジノで一日中働いて貰えるのは、だいたい100枚。そこからその日の食事代を引かなくちゃいけないから、普通に働いたら何ヶ月もかかる。
……そう、普通に働いたら。
「ムサシちゃ〜ん」
「は、は〜い」
カジノには、ゆっくり酒を飲めるラウンジがあった。ちょっと薄暗くて、音楽が流れてて、あたしと同じように客についてるバニーが何人もいるところ。
「今日はカードで遊んだんだけど、儲かっちゃってさあ〜」
「あら〜、おめでとうございます!」
小太りのおっさんの勝ち自慢を頷きながら聞く。おっさんの機嫌はどんどん良くなる。
「ねえ、ムサシちゃん。これ欲しくない?」
「!」
おっさんはコインケースから、金のメダルを1枚取り出す。金のメダルは、普通のメダル10枚分。ほ、欲しい……!
「欲しいでしょ? こんな所でバイトしてるんだもんね」
「う……は、はい」
「あげるから、おっぱい見せて」
「……」
ラウンジに集まる客は、どいつもこいつも「そういう客」だった。そして、この行為を止める人は誰もいない。バニーガール達も、そうやってメダルを稼いでる。
「……はい。見るだけよ」
制服をぺろりとめくって、胸を出す。おっさんの目が輝いた。
「うふっ、うふふ、綺麗なおっぱいだね。はい、メダル」
「ありがとうございます」
「ねえ、触ってもいい? そしたらもう3枚あげるんだけどな」
「うー……」
「ここの娘たちはみんなやってるよ? 大丈夫、大丈夫」
頭の中で、メダルがクルクル回る。これで4枚。もっと欲しい。そんな思いが、どんどん感覚を麻痺させる。
「ど……どうぞ」
胸を突き出した。おっさんは気持ち悪い笑みをニタリと浮かべて、あたしの胸を揉みしだく。
「ハァ、ハァ……。ムサシちゃん、おっきいおっぱいだねえ……ねえ、舐めてもいい? 今度は5枚あげちゃう」
これで9枚。毎日の給料とほぼ同額だ。ちょっと我慢するだけ……、ちょっと我慢するだけ。
「ん……いいわよ」
「嬉しいな〜。ペロペロしちゃうよ」
おっさんは完全に興奮しきっている。あたしの胸の先を吸って、舐めて、また揉んで……。
「ん……んっ」
身体が少し、反応してしまう。こんなおっさんの舌で感じるなんて屈辱でしかない。
「ねえ、ムサシちゃん。キス、しよっか」
「キスは……」
「10枚払うよぉ」
これで19枚。ほぼ二日分の給料だ。ダメ、メダルの事を考えると、なんにも断れない……。ぼーっとする頭で考えてる隙に、断りなくおっさんはキスをしてきた。それも、思いきり濃いやつ。
「んぅ……んっ……」
舌が口の中を這い回る。気持ち悪い。汗臭いし、酒の味がして嫌だ。我慢出来ない。こんなおっさん、今すぐブン殴ってボコボコにしたい。でも、そんな事したらここから出られる日が遠ざかる。ぎゅっと、拳を握りしめて耐えた。
「ぷはぁ、はぁ」
「うふふふ、可愛いね、ムサシちゃん……。また指名するからね」
仕事を上がった後は、ひたすらに残りのメダルの数を数えた。あと何日で出られるのかしら。毎日毎日、そればかり考えてた。
ある日、仕事を終えて控え室に行くと、そこにはサカキ様がいた。
「どうだ、ムサシ。仕事には慣れたか」
「サカキ様……。なんとか、ですね」
「今日は、いい話がある」
「なんですか?」
と言っても、嫌な予感しかしなかった。
「つまらん酔っぱらいの相手も、飽きて来た頃だろう。もっといいレートで稼ぎたくないか?」
サカキ様は、ニヤリと笑った。……当たり前の事だけど、知っているみたいだ。あのラウンジでいつも、何が行われてるのか。あたしのノルマが、あとどのくらいなのか。いいレートって一体どのくらいなんだろう。
「客1人あたり、金メダル50枚。どうだ?」
「ご、50枚……」
頭がクラクラした。普通のメダルなら500枚分。一日に何人か相手をすれば、あっという間に貯まるじゃない。
「やります」
「フッ。お前ならそういうと思っていた。ついて来い」
……そうして、あたしはここの裏カジノに来た。とんでもない所よ、ここは。表と違って賭け金が倍くらい違う。更なるスリルを求める金持ち向けって感じ。そしてあたしの仕事は、更に過激なものになった。もう、ラウンジなんて可愛いものはない。休憩所と称して、ベッドとシャワーしかない個室がいくつか用意されてる。指名が入ったらそこに行って、客の相手をする。今は指名がないから、こうしてスロットで遊んで時間潰してる。
……ピピピピピ。小型の通信機が鳴る。個室の番号が表示される。お呼び出しね。
表示された番号の個室をノックして、中に入る。
「こんばんはー……」
「おっ、来たね。新人ちゃん」
バスタオルを巻いただけの男が待っていた。中肉中背。そこそこ若い。30代かしら。まあ、おっさんじゃないだけマシね。
「優しくするからね」
そう言って、あたしの身体を抱き寄せた。器用にバニーガールの衣装と下着を脱がしていく。
「ん……」
キスをされた。舌が絡み合う。ここに来てから、一体何人の人とキスをしたかしら。数えたくない。どうせこれからも増える数字なんだから、数えても意味がないわね。本当にキスをしたい人は、ここにはいない。きっと今頃はご飯を食べ終わって、夢の中かしら。
唇が離れた。男はあたしの露わになった胸に夢中だ。揉んで、舐めて、先をペロペロと舐めてくる。
「あっ……!」
先を噛まれた。噛まれると痛いから、やめて欲しい……。居るのよね、噛むと感じるって勘違いしてる奴。びっくりして声出してるだけだっつーの。
勘違い男は散々胸をいじくり回したあと、自分のモノを取り出してこう言った。
「ムサシちゃん……。パイズリしてもらってもいいかな? ムサシちゃんの大きさなら、出来るよね」
「……はい」
あたしは自分の胸を持ち上げて、勘違い男のモノを覆った。挟み込んで、上下に動かす。
「あっ、あっ、いいよ、肌スベスベ……」
勘違い男は気持ち良さそうだ。これ、やりにくいのよね。いまいち何が気持ちいいのかわからない。男のロマンってやつ?
……コジロウも、こういうのが好きなのかしら。なんとなくだけど、あんまり胸に興味ないような気がする。きっと、普通にしてくれるはず。優しくて、嫌がる事なんか一つもしないで……。
あたしはいつも、「仕事」が終わるまでの時間をコジロウの事を考えて過ごした。少し切なくなって、たまに泣きそうになってしまうけど、コジロウの事を考えてると時間がすぐ過ぎていくから。
「ああっ、イイよムサシちゃん、イク、イクッ!!」
勘違い男は、私の胸と鎖骨のあたりに盛大にぶちまけて、果てた。
今日の稼ぎは、金のメダル150枚。普通のメダルに直すと、1500枚。だいぶ貯まってきたわ。疲れたから、メダル払ってイイもの食べちゃおうかしら。少しくらい、いいわよね……。
控え室に戻ってそんな事を考えていると、外から歓声が聞こえてきた。誰か大当たりでも出したのかしら?
ガチャ。
扉を開けて入ってきたのは、サカキ様だった。
「調子はどうだ」
「サカキ様……」
「景気の悪そうな顔だな。どれ、私と遊ぶ気はないか? そうだな、500だ」
「ごっ……!」
頭の中の勘定がおかしくなる。そんな枚数、喉から手が出る程欲しい——
「嘘だ。遊ぶのは頭の空っぽな女に限る。お前は、何だかんだ言って真面目だからな」
「はあ……」
それって、褒められてるのかしら。よく分からない。
「そういう女どもはな。私がいくらメダルをやった所でここを去る事は無い。分かるか?」
「えっ……どうしてですか」
「ここの居心地が良いらしい。メダルが手元にあればあるだけギャンブルやら酒やらに使って、また客の相手だ。哀れだろう。だから私は、せめてもの情けで遊んでやっている」
「……」
「お前には、帰る場所があるはずだ。そうだろう?」
ハッとした。帰る場所。その為に私はどんなに気持ち悪い思いをしても、イヤな思いをしても立っていられるんだ。
「はい!」
「フッ。もしここにずっと居たければ言え。その時は、朝まで遊んでやろう」
「いえ。必ず帰ります」
「いい目だ。少しも濁っていない」
サカキ様は、革製のコインケースを机の上に置いた。じゃり、と小さな音がする。
「これは……」
「チップだ。素直に受け取れ。ではな」
「ありがとうございます」
背を向けて、サカキ様は去って行った。
「どれどれ……、!」
コインケースの中には金のメダルがぎっしり詰まっていた。全部でざっと100枚。
今まで貯めていた額と合わせると、かなりの枚数になる。目標まで一気に近づいた。
「よし……、頑張らないと……!」
「サカキ様〜!」
「キャー! サカキ様〜!」
「私と! 私と遊んで下さい!」
女たちが手を振る。いつものように、皆美しい。
「やあ。……ムサシの姿がないようだが」
「ああ、あの髪の赤いコ……」
「もういないですよ」
「居ない? もう出て行ったのか」
計算では、まだまだかかると思っていたが。余程のハイペースで客を捌いたか?
「それが、スロットマシーンが大当たりしたらしくって」
「ニコニコしながら出ていったわ」
「フッ、フハハハッ。流石だな」
運すらも味方につける。タフな女だ。やはり、並の団員ではない。
ずっとこのまま、この地下に。そんな生き方が似合う女ではなかった。少し惜しい。あの美しい、曇りのない瞳が暗い闇に沈んでいく様が見たかった。
まあいい。団員として活躍してくれるのなら、それで構わない。あいつの帰る場所は、ロケット団なのだから。
「おかえりムサシ!」
「おかえりだニャ!」
「ソーナンス!」
「えっへへ。ただいま」
そう、ここが私の帰る場所。ソーナンスがいて、ニャースがいて、コジロウがいる。
「なんか、色々あって儲かっちゃってさ。あんた達、今日はあたしが奢るから、美味しいモノ食べにいくわよ!」
「おおっ、いいのかムサシ!」
「さすがだニャ〜!」
「ソーナンス!」
みんなが笑顔になる。ああ、この笑顔が見れて本当に嬉しい。ずっとずっと、この笑顔のために、あたしは頑張ってきたんだって思った。
なんだかとっても、いい感じー!