君に贈る花束

鐘屋横丁

注意書き

コジムサです。結婚します!
アニポケが終わるのが辛過ぎる一心で書きました。

君に贈る花束

     

 今日こそは。今日こそは。今日こそは。ずっとそればかり考えていた。でも、本当の本当に今日こそは、やり遂げてみせる。
 ニャースとソーナンスは、買い出しで居ない。ソファに寝っ転がって、雑誌を読むムサシと二人きりだ。
 胸が高まる。何度も台詞を考えては練習した。花束も買った。完璧だ。これ以上にない……告白だ。
「ムサシ」
「何よコジロウ」
 雑誌から目を離そうともしない。……これは予想外だ。なんとか話を聞いてもらわないといけない。話題だ。何か、話題はないか。
「えっと……」
「今忙しいの〜。おかっぱメガネから書類でも来た?」
 うんざりした顔を雑誌から覗かせる。
「……いや。思えばムサシ、俺たち何枚も反省文書いたよな」
「まあ……そうね。うんざりするくらい」
「サカキ様にも何回も怒られたよな」
「そうね〜。サカキ様、怒るとめちゃくちゃ怖いわよね」
「それでも……」
 ぎゅっと、拳を握りしめた。
「それでもムサシは、いつも一緒に居てくれたよな」
「え? ああ……そうね……」
「バイトしてる時も……任務の時も……失敗した時も……アジトでご飯食べる時も……寝る時もいつも一緒に居てくれた」
「コジロウ……」
 ムサシがソファから起き上がる。
 もう、覚えてた台本なんか吹き飛んだ。自分でも何を言ってるのか、よく分からない。それでも。それでも伝えなくちゃいけないんだ。
「その……これからも一緒に居てほしいっていうか……。ううん、一緒に居てくれ!」
 背中に隠していた花束を差し出す。
 ムサシはポカンとしたあと、顔を赤らめた。
「えっと……今までそんな事誰にも言われた事なかったから……嬉しい……。ありがと」
「それじゃあ…….!」
「何言ってんの。今まで通りに過ごすだけでしょ。これからも、ずっと一緒よ」
 ムサシがにこりと笑う。
「そっか……一緒か……そうだよな……」
 いまいち、気持ちが伝わってない気がする。俺は、本当はもっと、一歩先に進みたくて——
 ぐるぐると考えていると、ムサシがニヤリと笑った。
「ねえ、コジロウ。ロケット団って、結婚お祝い金出るらしいわよ」
「!!! けけけけ、結婚」
 思わぬ言葉に体が固まる。
「そ! どうせあたし達このまま変わらないし、結婚しちゃわない?」
「ムッ、ムサシ……それは……考えてなかったというか……」
「何よう。こんな美人と結婚出来るのよ? もっと喜びなさいよ」
「う……うん……もちろん嬉しいよ……」
「じゃあ、決まりね! おかっぱメガネ、なんて言うかしら」
 何食わぬ顔をして話を進めるムサシの顔は、よく見ると耳まで赤い。
「ほ……本当に、これでいいのかな」
「大丈夫よ。あたし達、今までだって上手く行ってるんだから」
 にこりと笑うムサシ。この笑顔を見ていると、なんでも出来る気がしてくる。
「ただいまニャー」
「ソーナンス」
「あら、おかえりなさい。アイス買ってきたー?」
「ちゃんと買ったニャ! ニャ?この花束はどうしたのニャ」
「だめ、これはあたしの! 大切なものなんだからねっ」
「ソーナンス……?」
 不思議がるニャースとソーナンスに何も言わずに、ムサシは花束を花瓶に飾った。